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DX推進をゼロから始めるなら?DX人材を確保・育成する企業の人事戦略

2019年6月7日、前年に開催された第75回IT戦略本部での総理大臣の指示を受け、Society5.0時代に向けた「デジタル時代の新たなIT政策大綱」がリリースされました。

官民のデジタル化を推進していくという国の方針が示されたことで、デジタル人材への需要が一気に高まっています。

デジタル技術の活用によって企業のビジネスを変革し、デジタル時代に勝ち残れるように競争力を強化することを「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」と言います。

新型コロナの影響を受け、企業のITに対する投資額は前年度実績比15.8%増になっています。

DX推進に必要なデジタル人材の職種をまとめ、デジタル人材を企業に集めるための方法について解説します。

DX推進に必要な6つの職種:企業側の人材育成・獲得方法の動向

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行った「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、DX推進人材は6つの職種に分かれており、いずれも企業のニーズに対して人材が不足していることが示されています。

DX推進人材の6つの職種を説明し、企業側がそれらの人材を育成あるいは獲得しようと取り組んでいる人事の動向について説明します。

DX推進に必要な6職種:推進・管理を担う職種と技術職

DX推進人材は大きく分けて6職種、うち全体の推進・管理を担う役割が2職種、実行を担う技術担当が4職種に分かれます。

<推進・管理>
プロデューサーDXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材 (CDOを含む)
ビジネスデザイナーDXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材
<技術>
アーキテクトDXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材
データサイエンティスト/AIエンジニアDXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材
UXデザイナーDXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを 担当する人材
エンジニア/プログラマ上記外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材

特に不足しているのは、推進・管理を担うプロデューサーどビジネスデザイナーですが、技術担当の4職種も企業のニーズよりも人材が不足している傾向です。

引用元:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~調査結果サマリ~

人材の育成・確保がDX推進の最初のハードルです。

DX推進を担う人材の素質:6職種に対する企業の人材育成・獲得方法の傾向は?

DX推進を担う6職種の人材を育成・獲得に向けて各企業が現状取り組んでいる内容を職種別にまとめながら、職種ごとに求められる資質について説明していきます。

推進・管理を担うプロデューサー/ビジネスデザイナーは社内育成重視

DX推進の全体の流れを統括するプロデューサーやビジネスデザイナーは最も不足している職種ですが、これらの職種に対し8割以上の企業は社内の既存人材を育成して人材確保に努めていることが、IPAのアンケート結果で示されています。

DX推進に取り組む企業がプロデューサーやビジネスデザイナーに関して社内人材の育成を重視している背景として、次のような理由が考えられます。

  • プロデューサーには自社のビジネスや業界に対して深い理解が求められるため、外部人材では代替しにくい
  • ビジネスデザイナーは経営企画や営業・マーケティングといった既存の部門の人材が適用できる可能性が高い

既存人材の育成に次いで採用されている方法は中途採用であり、DX推進の推進・管理には社外の人材を用いにくい傾向が明らかになりました。

技術を担う4職種では連携企業からの人材補完も視野に入る

DX推進の技術部分を請け負う4職種は、人材の育成・獲得方法において推進・管理を担う2職種とは異なる傾向が見られます。4職種別に傾向を解説していきます。

  • アーキテクトは既存人材の育成と中途採用に次いで、連携企業からの人材補完も割合として多い(33.3%)
  • データサイエンティスト/AIエンジニアは既存人材の育成と中途採用が5割以上。連携企業からの補完も41.5%と多い。
  • UXデザイナーは、既存人材の育成と中途採用が共に5割以上。連携企業からの補完も40.5%と多い。
  • エンジニア・プログラマは、中途採用と既存人材の育成が同率の53.7%。連携企業からの補完が次いで48.8%。新卒採用が4職種で一番多く、2割超え。

技術職は推進・管理に比べれば社外からの人材を採用する事例が多いことが、データからはわかります。しかし、DX推進人材の人材計画全体としては既存人材の育成の比重が高いことが示されました。

DX推進を進めた企業事例から見る人事の課題

DX推進人材を確保するためには、既存人材の育成は避けて通れない課題です。

すでにDX推進で一定の成果を出している企業ではどのように既存人材の育成を行っているのでしょうか?

DX人材の育成体制を整えるための参考事例をまとめました。

DX推進で成果を出している企業事例2社:ダイキン・ソフトバンク

DX推進で一定の成果を出している企業として、ダイキン工業とソフトバンク2社の人材育成制度の事例を取り上げます。

企業内大学を設立したダイキン工業

ダイキン工業では、情報科学分野にて大阪大学と連携し社内講座「ダイキン情報技術大学」を開催しています。

数学などの基礎知識からプログラミング、機械学習やAI応用までの幅広い教育を行うことで、AIやIoTを活用した技術開発や事業開発、ビジネス創出を担う人材を育成するのが狙いです。

管理職・既存社員・新入社員それぞれに育成コースが用意されており、管理職を対象にした育成コースでは、基礎知識の習得とともに、DX推進人材のマネジメントを行う側の啓発・意識向上も行っています。

120名体制のDX本部を設立したソフトバンク

ソフトバンクは最先端技術を活用して通信事業の枠を超えた新領域への事業拡大を狙う成長戦略「Beyond Carrier」に基づき、新しいビジネススキームを作り上げ事業化するスキルを優先したDX推進を行っています。

営業や営業企画、事業企画などの分野で活躍していた人材を集めて、2017年10月には120名体制のDX本部を立ち上げ、現在はエンジニアやUI/UXデザインを身につけた技術者も参画させています。

  • デジタル化が進む小売・流通分野
  • 健康・医療のビッグデータ活用が目覚ましいヘルスケア分野
  • IoTやAIを活用したスマートビルディング実現に向けての建設・不動産分野

DX本部によって、ソフトバンクの通信事業の枠を越えて、次のコア事業となる新事業の創出が進められています。

2事例から見るDX推進人材の社内育成ポイント

DX推進を担う人材を社内で育成する理由としては、コストとスピードのメリットが挙げられます。

常に進歩し続けるDXの技術をキャッチアップし、市場や社会の変化に対応するためのPDCAを高速で回すために、人材を育てて内製化する必要があるのです。

外注だけではコストがかかりすぎますし、現場の課題を拾い上げ続けることも難しいため、人材育成はDX推進に必須の課題といえます。

人材の育成には時間や労力、費用など短期的には大きなコストが先にかかるため、リクープを見込んで計画を立てなくてはなりません。

ゼロからDXを始める企業にとっては、組織体制の土台を作る段階で社外のプロフェッショナルの力を借りるのは有効な手法です。

ゼロから人材育成に取り組むよりは、実績のあるプロ人材を活用できれば、DX人材育成の仕組みを作るまでのコストが削減され、実現までのスピードも向上が見込めるでしょう。

まとめ:DX推進人材は長期視点で社内での育成を基本に計画を立てよう

DX推進を担う人材について、企業がとるべき人事戦略についてまとめると次のようになります。

  • DX推進を担う人材の職種は6職種。全体的に人材不足であり、企業の確保・育成が課題
  • DX推進の成功事例を見ると長期視点で社内教育に取り組んでいる。土台を作る段階で社外のプロ人材活用は有効。

DX推進は長期的な取り組みであり、コストがかかります。企業の課題に応じて、3年後5年後を見据えた人材計画が必要になるでしょう。

参考記事:AI時代にワーカーが生き残る方法:これからの仕事に必要な能力とは

DX推進の他、社外のプロ人材が解決に役立つ企業課題は多々あります。ぜひお気軽にお問い合わせください。