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働き方改革の関連法規を基本から解説:日本の働き方はどう変わる?

ニュースなどでよく耳にする働き方改革。同時に、働き方改革関連法という用語も聞くことがありますが、意外と内容については詳しく知らない人が多いようです。

厚生労働省の「働き方改革の実現に向けて」によると、働き方改革の目的は次の通りです。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

働き方改革関連法は日本で働く全ての人、そして企業に関係する法律です。働き方改革関連法について基本から解説し、これからの働き方の変化について考察します。

働き方改革関連法とは:法改正の目的と変化の内容

働き方改革関連法とは、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」と言います。「働き方改革一括法」とも呼ばれています。

2018年に公布され、2019年から順次施行の運びとなりました。また2020年は新型コロナの影響で、期せずして働き方改革が進んだと言われています。

働き方改革関連法の軸となった8つの労働にまつわる法律、そして働き方改革の3つの柱についてまとめました。

8本の労働法の改正

働き方改革関連法の目的は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備」です。関係法律とは、下記の8つの労働法のことを指します。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  • じん肺法
  • 雇用対策法
  • 労働契約法
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

上記8本の法律を改正するために新たに立ち上げた法律が「働き方改革関連法」です。

働き方改革3本の柱

働き方改革の目的は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況をふまえて、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることです。

働き方改革は以下の3本の柱で成り立っています。

  • 働き方改革の総合的かつ継続的な推進
  • 長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

8つの法律を改正し、さらに企業の体制や関わる人の考え方を変えていく必要がある働き方改革は日本が長期的な視点で推し進めている変化の一つと言えます。

働き方改革関連法は日本の働き方をどう変えたのか:改正ポイントの概要

働き方改革関連法によって労働に関する法律が改正され、様々な規制が加わるとともに違反に対しての罰則が設けられるなど、一定の強制力をもって従来の働き方が変化することになりました。

「労働者が働きやすくなるための法律」といいますが、具体的にはどのような変化が起こったのでしょうか。改正された労働関係の法律のうち、大きな改正ポイントをピックアップして解説していきます。

法改正ポイント①時間外労働の上限規制

改正ポイントの1つが、時間外労働の上限が企業の義務として課せられたことです。

改正後の時間外労働の上限
45時間/1ヶ月・360時間/年

違反した場合には罰則が課せられます。また36協定の特別条項でも新たな規制が加えられています。具体的には以下の通りです。

  • 1ヶ月の時間外労働と休日労働の合計時間数を100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内
  • 1年の時間外労働時間は720時間以内
  • 上限時間を超えられる回数は年6回以内

時間外労働の上限規制の背景としては、長時間労働による過労死やうつ病のリスクが長らく問題視されていたことが挙げられます。労働時間の上限がなかったことから、育児や介護との両立ができずにせっかくのキャリアを諦めてしまうという事例も少なくありませんでした。

時間外労働の上限規制は、労働者の心身の健康とワークライフバランスを守ることが目的です。就業時間を増やさずに、仕事の効率を上げる人材マネジメントがこれからの企業ではより求められると考えられます。

法改正ポイント②年次有給休暇の取得の義務化

改正ポイントの2つ目が、年次有給休暇の取得の義務化です。

一定期間働いた労働者に対して、給与の発生する休暇を付与する年次有給休暇ですが、これまでは取得が義務化されておらず、取得率も全体的に低めでした。働き方改革の法改正によって有給休暇の取得が義務化され、雇用者側が適正な有給休暇を取得させなかった場合は違反として罰則が設けられています。

有給休暇の取得時期については雇用者側が指定することとされています。また年次有給休暇の取得には下記の条件があります。

  • 入社から6ヶ月間以上継続勤務している
  • 全労働日のうちの8割以上出勤している

条件を満たす継続勤務6ヶ月の時点で10日間の有給休暇が付与されます。勤務期間が長くなるほど有給休暇の日数は増加し、たとえば1年半であれば11日間の休暇、2年半であれば12日間、というように休暇の日数が決められています。

パートタイマーやアルバイトであっても有給休暇は取得可能です。ただしこの場合は条件が変わります。

  • 週4日勤務で継続勤務が3年間以上
  • 週3日勤務で5年半以上継続勤務した上で直近1年間の出勤率が8割以上

上記のどちらかを満たすことで正社員ではなくても有給休暇を取得できます。アルバイトやパートタイマーでも有給休暇を取得する権利は法によって定められているのです。

法改正ポイント③正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消

パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用労働者は、これまで正規雇用労働者との間で不合理な待遇差があると指摘されてきました。

  • 基本給や賞与といった賃金
  • キャリア形成や能力開発の機会
  • 福利厚生など

働く人が自由に働き方を選びやすくなるように、今回の法改正によって「同一労働同一賃金ガイドライン」が作成され、不合理な待遇差の解消に向かって制度が整えられました。

同一労働同一賃金とは、雇用方法に関係なく同じ業務をこなしているなら同じ額の賃金を支払うべきという考え方のことです。

さらに雇用者側は労働者の待遇に関して説明の義務が課せられました。パートタイム・有期雇用労働者・派遣労働者といった非正規雇用労働者は、自身への待遇について雇用者側に説明を求めることができます。雇用者側は労働者から要請があった場合、必ず待遇の根拠について説明をしなければなりません。

不合理な待遇差を解消する施策として、さらに裁判外紛争解決手続の規定の整備があります。裁判を行わなくても労働者と雇用者間の紛争を解決できるように、トラブルを解決するための制度が整備されることになります。

法改正から企業が今取り組むべき「働き方改革」とは

働き方改革関連法によって加わった様々な変更点に対応するためには、社内のルールだけではなく人事をはじめとした組織体制の根本からの改善が必要となった企業も多く存在します。

すでに多くの企業が働き方改革に対して変更点に対応した改善を加えていますが、今後も労働者の幅広いキャリアを認めるための制度改正が国全体で推し進められることが考えられます。

企業が優先して今取り組むべき「働き方改革」とは何なのでしょうか。

社内ルール作り:労働時間の是正や待遇差の解消

働き方改革は社内のルールだけではなく組織で働く人全体の意識を見直すよいきっかけであると言えます。例えば次のような項目をチェックしてみましょう。

  • 36協定は結ばれているか、実質的に守られているか
  • 勤怠管理は徹底しているか、早朝出勤やサービス残業・持ち帰りが恒常化していないか
  • 非正規社員に対する待遇差が生じていないか、ハラスメントは起こっていないか

どの項目についても、「形式的」ではなく「実質的」に働き方改革の改正ポイントが守られているかどうかがポイントです。制度を整えるだけではなく、教育を通じて社員全体の意識を変えていく必要があります。

また、一人ひとりが抱える作業量や業務範囲、賃金についても適切なのかどうか、待遇の根拠として人材管理側から見直していく必要があるでしょう。

多様な働き方を実現していく仕組みづくり

働き方改革の目指すのは、柔軟かつ多様な働き方の実現です。子育てや介護といった様々な人生でのイベントを経てもキャリアを諦めずにすむような仕組みづくりが各企業に求められています。

自分で始業終業時間を決めるフレックスタイム制や、コロナ禍で急速に広まったテレワークも新しい働き方の一例です。副業の解禁に留まらず、社員の個人事業主化という選択肢を用意したタニタや電通のような事例もあります。

参考記事:企業の働き方改革の今を考える:タニタ・電通の「社員個人事業主化」まとめ

制度の変更にはコストがかかりますが、働き方改革を推し進めることで労働者のキャリアアップの幅が広がり、企業としては優秀な人材を確保しやすくなるメリットがあります。

まとめ:企業内で働き方改革を推し進めるためには根本的な変革が必要

働き方改革関連法による改正と日本の働き方の変化について、まとめると次のようになります。

  • 働き方改革関連法によって8つの労働関係の法律が改正され、労働時間や有給休暇などに対して様々な規制が加えられた
  • 働き方改革を組織改善のきっかけにするためには、ルールを整えるだけではなく教育を通じた社内の意識改革が必要

法改正を「面倒ごと」ではなく「改善のチャンス」に帰るためには、根本的な組織改革が必要となります。社内の教育体制を整えるためには、外部からの第三者視点が重要になることも多く、プロ人材の人事を外部から活用する事例もあります。

参考記事:コロナ禍で注目されるプロ人材の人事とは:採用を外注する時代の企業ニーズ

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